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Spa Lady Windy

「東日本大震災」に関する有馬温泉の取り組みについて

神戸市北区・有馬温泉の旅館「陶泉 御所坊(ごしょぼう)」十五代目当主

 「東日本大震災」に被災された方々に、心からお見舞い申し上げます。


 被災地の現状を伝える驚愕の映像やニュースに接するたびに、みなさまが直面されている苦痛と心労に思いを馳せ、何とかお役に立ちたい、私たちにもできることはないのか、と焦燥感が募ります。この惨状の中でも、みなさまが冷静に周りの方々と支えあい、心を一つにして困難に立ち向かっておられる姿に胸を打たれます。その姿は海外からも称賛されていると聞き、同じ日本人であることを誇りに思うとともに「何かお役に立てることをしたい」という気持ちで一杯です。


 振り返れば、有馬温泉も近年、いくつもの災害に見舞われました。1995年の「阪神淡路大震災」では温泉街全体が大きな被害を受け、宿泊客が激減しました。一昨年、新型インフルエンザが発生したときには宿泊のキャンセルが相次ぎ、一時は温泉街全体が火の消えたようになりました。しかしながら、大震災の時には、自らが被災しながら、被災者のために温泉を開放し、全国の同業者の仲間の力を借りて、避難所に物資を届け、炊き出しなどを行いました。新型インフルエンザの時には、風評被害に泣かされながら、観光関係者はもとより町内の人間がこぞって温泉街を清掃し、いつでもお客様をお迎えできるように備えました。自粛ムード、沈滞した気分に流されることなく、自ら行動することで活路を見出してきたのです。


 大地震やインフルエンザという、いわば天災に見舞われたことによって、私たちは打開不能とも見える困難に直面した時こそ「自粛」し「沈滞」するのではなく、行動することが大事だということを学んだのです。


 この教訓を、今こそ生かしたいのです。


 私たちは、被災者の方々の力になりたいという気持ちを形に表します。
 その第一歩として、募金活動を開始します。観光関係者の売り上げの一部を義援金といたします。この活動には、有馬温泉にお越しいただいたお客様にもご協力をお願いします。すでに、昨年来「有馬温泉ゆけむり大学」に携わってくれた大学生から協力の申し出をいただいております。

 いまは混乱しておりますが、しかるべき時期になれば「ゆけむり大学」の大学生とも協力して、被災地での支援活動もさせていただきます。さらには、長期滞在者の受け入れや支援コンサートなどの準備にもかかっております。


 温泉は古来、多くの人々の心身の疲れを癒してまいりました。もう一丁、頑張ろうという明日への活力を生み出す泉でもありました。あの阪神大震災の時、私たちが開放した温泉に、殺伐とした表情でお越しになられた方々が、入浴後は仏様のような顔になってお帰りなられました。温泉の「蘇生の力」「癒しの力」を象徴する出来事だったと、いまも覚えております。


 この温泉の力をいまこそ生かしたいのです。有馬温泉にお越しいただき、地球の恵みである温泉に入り、おいしいものを召し上がってください。ゆっくりとお泊りいただき、心身をリフレッシュして、明日への活力を養ってください。温泉は心に余裕のあるときに楽しむだけではなく、こういう非常時にこそ利用していただきたい場所だと私たちは考えています。心身ともに疲れた方々に「蘇生の場」を提供することが有馬温泉の使命であると信じております。


 最後になりましたが、もう一度、被災地のみなさまに心からのお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈りいたします。

 


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